2009/08/28 日刊工業新聞
「まだ削りますか」。ニッセー(山梨県大月市新仏利仲社長)の本社ショールーム入口には、切削から塑性加工への転換を促すメッセージが掲げられている。同社の主力は高精度コンピューター数値制御(CNC)転造盤。2008年度売上高は前期比15%減と不況の影響を受けたが、自動車分野を軸として半導体や印刷など微細加工分野への攻勢で反転を目指す。
転造は、ダイスと呼ばれるネジ山と逆の溝を刻んだ工具を棒状のワークに転がしながら押し付けたり、ワークを押し込んだりして成形する加工法。材料を削り出す切削と違い、盛り上げて成形するため「ムダが生じない」などの利点がある。
現在は転造技術を使った専用機開発に力を入れる。その一つが「歯車仕上げ転造盤」。歯車仕上げのシェービング加工を転造で代替する。高い精度が要求されるが「転造盤とダイスの両方を開発できることが強み」(新仏社長)と技術に自信を持つ。精度は日本工業規格(JIS)3~4級の歯車に対応する。
加工機を両輪のダイス製作には自社開発のシミュレーションソフトを活用する。従来は半年から1年かけて15~20回の試行でデータを取ってダイスを製作していた。これをシミュレーションソフトで代用することにより2週間に短縮できた。「技術を実用化して提供するには確実な裏付けが必要」(新仏社長)と今後の製品開発に応用展開する予定だ。
一方、新たな収益源として商品化の準備を進めているのが緩まないボルト「パーフェクトロックボルト」(PLB)だ。一つのボルト上に2種類のピッチの違うネジ山を加工、異なるピッチを歩む二つのナットが緩まない工夫をした。複雑な形状となるボルトのネジ山加工には、同社の高精度転造盤が欠かせない。
PLB量産では微細加工でもバリが出ない、後工程に人手がかからないなどの転造のメリットを生かす。9月には本格的なビジネス展開を始動、5年度に15億円の売り上げを目指す。今後は風力発電や建機、医療機器分野への拡販、さらには海外のインフラ整備の関連需要を視野に入れる。